伝統をたずねて

江戸切子

小山 織氏
小山 織(こやま おり)
インテリアスタイリスト

都区内に唯一残る造り酒屋の長女として生まれる。早稲田大学文学部卒業。雑誌編集部勤務の後、フリーランスのインテリアスタイリストとして、雑誌、広告のインテリアテーマのスタイリングや執筆を手がける。日本の伝統的な生活文化に造詣が深く、機能的で美しい伝統の逸品を現代の暮らしに生かす提案を続けている。著書に「和の雑貨」「引出物」「小山織の和の雑貨とインテリア」(以上マガジンハウス)「職人気質をひとつ」(NHK出版)。近著に「INSPIRED SHAPES」(講談社インターナショナル)などがある。

卓上型鯉のぼり「悠々」

■帯留
菊つなぎ、菊篭目、雪、魚々子、くもの巣などの文様の珠玉の切子。色を被せたガラスの切子は潔く、単色ガラスの切子は全体の形に映えて美しい。金具は銀製、銀線細工作家 松原智仁さん制作。サイズはおよそコインほどが多く、形によって差異があります。
1点¥30,000から、各々異なります。

江戸時代、日本橋で眼鏡を制作していた加賀屋久兵衛の、引札と呼ばれた商品カタログ図版が現存しています。これに無色透明のガラスに麻の葉や篭目(かごめ)などの文様を刻んだ器類の掲載があり、江戸切子の始まりとされています。コップや組重(くみじゅう)、文具揃などと名称も記された品々は、舶載されたヨーロッパのカットガラスの影響を受けて大阪で修行した江戸の職人が、金剛砂と鉄の棒などで日本古来の文様を手彫りしたおしゃれで贅沢なもの。

明治になり国産ガラスの量産を目的に官営のガラス製造所が東京に設立され、ヨーロッパからガラスの種類別に専門の技師が招かれ国内技術者の養成が進められました。その伝習生が学んだイギリスのカット技法を取り入れて江戸切子は飛躍的に発展。透明ガラスに色ガラスを被せた本体に、欧風のカット模様を施した現存の大正や昭和初期制作の切子の器は今なお斬新に見えます。

平成の今、おしゃれな着物通が注目する切子の帯留があります。その作り手 小川郁子さんの師匠も、官営ガラス製造所伝習生の直弟子二代目の故 小林英夫さん。江東区で育った小川さんは大学で心理学を学ぶ傍ら、小林さんの切子教室に通い、砥石などの回転盤でカットを入れ、回転木盤や手磨きで仕上げる切子の制作に魅せられ、卒業後迷わず小林さんに弟子入り。九年間の修行のすえ独立。活動は公募展の出品や定期的な大小の個展。

「細々でも作り続けていくこと、それとともに常に新しさを感じさせる表現が大事と思っています」と、小川さん。余白と文様とのバランスが肝要という師匠の教えを胸に独自の工夫を凝らす表現は、切子の文様世界の枠を越えてのびやか。心が解き放たれるような印象は小川さんの手ならではのものです。

和紙クッション

■金赤蓋物
篭目文様、蓋はケヤキに拭き漆。
径7×高さ(蓋部分を含め)8cm ¥70,000

和紙角座

■被硝子切子鉢「雪の夜」
平成22年 日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞受賞の作品 菊篭目、魚々子、独自考案の雪の結晶の文様で構成した黒の切子。 径31.7×高さ7.3cm

和紙クッション

■アンバー寸銅酒杯
正面に玉、杯底に菊つなぎの文様。大胆な造形。
径5.2×高さ6cm ¥22,000

和紙角座

お問い合わせは http://panorama-index.jp/

※価格はすべて税別価格です。「雪の夜」を除いて photo by panorama.

2017 vol.31