健康プラザ:アルコールと心臓病

菱田 仁氏
菱田仁(ひしだ・ひとし)氏 [医療法人誠厚会・名駅前診療所保健医療センター所長 / 前 藤田保健衛生大学病院 院長]

昭和40年、名古屋大学医学部卒業。同大学大学院修了、医学博士。名古屋大学第一内科副手、名古屋保健衛生大学(現・藤田保健衛生大学)内科講師、助教授を経て昭和63年教授、平成18年2月より病院長。平成21年4月より医療法人誠厚会・名駅前診療所保健医療センター所長。専門は臨床心臓病学、特に心不全、虚血性心疾患、画像診断。

忘年会や新年会のシーズンがやってきますと、お酒を飲む機会が増えると思います。そこで、今回はお酒をテーマに取り上げます。

お酒は古来より人の文化や生活に深く浸透し親しまれてきました。しかしながら飲酒により交通事故などの社会問題を引き起こしたり、肝臓病などの健康障害の原因ともなります。そのため飲酒(アルコール)対策は「健康日本21」という国が推進する国民的健康運動では重点9項目の一つになっています。ただ、昔から「酒は百薬の長」とも言われるように、飲酒は悪い面ばかりではありません。結局は、「節度ある適度の飲酒」、即ち、飲み過ぎないように賢く飲むことが大切です。

少量ならリスク減も

それには根拠があります。大量飲酒が有害なことは間違いないでしょう。しかしながら、飲酒量と病気になるリスクとの関係を調べると、少量飲酒者では病気のリスクが非飲酒者に比べてむしろ低く、それより飲酒量が増えるとリスクが高くなるという傾向を示す(Jカーブ)場合があります。飲酒量と虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳梗塞、糖尿病との関係です。 アルコール症人病気のリスクの関係 例:虚血性心疾患、脳梗塞、糖尿病 欧米では総死亡数も同じ関係です。ただ、すべての病気でそうではなく、高血圧、脂質異常症(中性脂肪)、脳出血、乳がんでは、非飲酒者よりも飲酒者でリスクが高く、飲酒量が増えると、それに比例してリスクが増します。一方肝硬変のリスクは、飲酒量が少ないうちは殆どなく、ある程度多くなると急激に高まります。このように病気のリスクが非飲酒者よりも少量飲酒者の方が低く、それより飲酒量が増えると飲酒量に比例してリスクが高くなる、というJカーブの関係(図)が認められることは、少量であれば飲酒は健康にむしろ良い影響を与えることもありうることを示唆します。そして、そのような傾向を示す病気のうちで最も有名なのが虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)なのです。飲酒が虚血性心疾患に良い効果があるとすれば、それはアルコールや混入物(ワインのポリフェノールなど)が、善玉コレステロールを増やしたり血液が固まるのを防いだり、あるいは抗酸化作用を発揮することによると考えられます。ただ、飲酒が既に述べた様々な有害作用も生じうることを考慮すると、非飲酒者がそれを目的に飲酒することはしない方が良いと言われています。また飲酒は高齢者に多い心房細動という不整脈を誘発しますので、その点にも注意が必要です。

日本酒1合、ビールなら中瓶1本

では、少量の飲酒、即ち「節度ある適度の飲酒量」とは具体的にどのくらいの量でしょうか。「健康日本21」では主に飲酒量と総死亡の間のJカーブの関係にもとづいて決めているようですが、純アルコール量として、男性では1日20g程度、女性ではそれより少な目(男性の1/2〜2/3)とされています。高齢者や飲酒後に顔面潮紅などのフラッシング反応を起こす人(遺伝的にアルコールが分解されにくい人)も、量を控えるべきでしょう。

なお、純アルコール量(g)=酒の量(ml)x純アルコールの体積濃度(度数%の数値÷100、例えば度数5%→x0.05)x純アルコールの比重0.8と計算されますが、含有アルコール量に基づいて酒量を表す方法がありますので、それを使うと便利です。基準飲酒量(ドリンク)です。日本では、10gの純アルコールを含む酒の量を1ドリンクとしています。従って、適度の飲酒量(男性)は1日2ドリンクで、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ウイスキーならダブル1杯、ワインならワイングラス2杯弱ということになります。

最後に、まとめを兼ねて、健康に留意した飲酒の仕方を列記します。

  1. 飲酒量は男性は1日2ドリンクまで、女性や高齢者はそれより少な目に。また飲酒後フラッシングを起こす酒に弱い人も、習慣飲酒でがんや内臓障害を起こしやすいので少な目に。
  2. 食事と一緒にゆっくり飲み、アルコールの血中濃度を急速に上げない。また、たまに飲んでも大酒しない。
  3. 週に2日は休肝日を作り、アルコール依存を防ぐ。
  4. 入浴や運動前の飲酒は、血圧低下や運動能力低下、不整脈誘発などのため危険。
  5. 寝酒は睡眠を浅くするので控える。睡眠薬との併用禁止。
  6. 妊娠中や授乳中は子供の発達を障害するので禁酒。
  7. 定期的に肝機能検査などの検診を受けて、飲み過ぎていないかチェックするのも良い。

参考:厚生労働省:メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)