岩崎元郎の山歩きのススメ

三千メートル峰、はじめの一山

岩崎 元郎氏
岩崎 元郎(いわさき もとお)
日本登山インストラクターズ協会理事長

1945年、東京生まれ。無名山塾主宰、日本登山インストラクターズ協会理事長。中高年登山ブームの仕掛け人。81年春、ネパールヒマラヤ・ニルギリ南峰登山隊に隊長として参加。帰国後11月、無名山塾を設立。NHK教育テレビ番組『中高年のための登山学』で講師を務める。著書に『山登りの作法』(ソフトバンククリエイティブ)、『ぼくの新日本百名山』(朝日新聞出版)、『登山不適格者』(NHK出版)ほか。『文藝春秋』に「悠々山歩き」を連載中。

山が好きな者にとって梅雨はウエルカムではないが、梅雨が明ければ梅雨明け十日とよばれる晴天が続く。夏山シーズンの開幕だ。日頃は身近な低山で山歩きを楽しんでいる方も、夏山ベストシーズンには三千メートルの頂にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

我が国には三千メートルを越える山が二十一座ある。日本一の富士山を除けば、三千メートル峰は日本アルプスに集中している。二十一とは、山渓・山の便利帳を参考にした数字だ。ここでは徒歩四十分の開きがある農鳥岳と西農鳥岳を一座として捉えているし、立山は大汝山が入り三千三メートルの雄山は外されている。捉え方・数え方によって数字はまだ増える、まっいいか。

目指せ三千メートルとなると、山馴れない方はだれもが富士山を思い浮かべるだろう。一度は登りたいと思っていたし、今夏は富士山で決まり…なあんてことは早計であると知ってほしい。冬富士は我が国でも第一級の難度の高い山。夏でもブーム便乗で登るような山ではない。一般的に二千五百メートルを越えると高山病の症状が出て来るといわれている。富士山以外の三千メートル峰は二千五百から五百メートル高いだけだが、富士山は千メートルも高いのである。五合目から上は遮るものがないから、天気が悪化したら大変な事態を招きかねない。富士山は登ってほしい山だが、安易には登ってほしくない山だ。

山馴れない方にお勧めしたい三千メートル峰、はじめの一山は北アルプスの乗鞍岳。JR松本駅から新島々に行くと、バスが山頂直下、標高二千五百メートルの畳平まで運んでくれる。頂上は三千二十六メートルだから、二本の足で体を持ち上げて行かなければならないのは五百メートルちょっと。畳平から肩ノ小屋まで徒歩三十分、そこから山頂までは一時間。もちろん富士山同様の、高山であることのリスクはある。体調が悪かったら登山中止、天気が悪化しそうだったら登山中止、安心安全登山のポイントは“逃げるが勝ち”と心しておくこと。

観光客も多く、プレッシャーの少ない乗鞍岳で三千メートルを体験しておけば、余裕をもって富士山にチャレンジできるはず。

2017 vol.31