伝統工芸のひきだし - Japan Traditional Crafts

能登上布(のとじょうふ)

日野 明子(ひの あきこ)氏
日野 明子(ひの あきこ)
クラフトバイヤー

1967年神奈川生まれ 共立女子大学家政学部生活美術学科在学中に教授であった秋岡芳夫氏の影響を受ける。松屋商事(株)(百貨店松屋子会社・1998年に解散)にて北欧テーブルウェアおよび国内クラフト/工芸品の営業を経て、1999年独立、スタジオ木瓜を設立。一人で問屋業を始める。ショップと作家・産地をつなぐ問屋業を中心に、テーブルウェアを主体とした生活に関わる日本の手仕事・地場産業の展示会や企画協力、アドバイスを行う。
写真:長田朋子

洋装が日本人の生活に入り込むまでは着物が日常着だった。素材の繊維は動物性の絹、植物性の木綿、麻が使われてきた。絹は蚕のまゆの糸を、木綿はわた(棉)を紡いで糸にする。絹や木綿より前から使われていたのは植物の繊維を糸にしたもので、縄文時代にはすでに麻の繊維を利用していたといわれている。麻はいくつかの種類があり、アマ科のジュート、リネンとも呼ばれる亜麻。日本ではクワ科の大麻(ヘンプ)、そしてイラクサ科に属する苧麻(ちょま)(ラミー)が生息し、これらの繊維は通気性に富み、多湿な日本では夏の着物として重宝されてきた。

上布とは、上質な麻布のことを言う。日本五大上布の一つに数えられる能登上布は能登半島の中能登に2000年前、第10代天皇の崇神(すじん)天皇の皇女がこの地で機織りを教えたことが起源といわれる。鎌倉時代には東大寺に麻を納めた記録も残り、この地で育てた苧麻は他の上布の産地で使われるほどだった。麻の生産とともに反物の生産も着実に増え、1914年(大正3年)には「能登麻織物同業組合」が設立され、昭和初期には織元は120軒以上、年間約40万反の生産量で全国一になるほどだった。しかし終戦後、和服人口は減少の一途を辿り、1982年に織元は「山崎麻織物工房」一軒のみとなる。この一軒もいつ無くなってもおかしくない時代の流れの中、「この美しい布を残す」作り手と使い手の思いにより、今も支えられている。

今、全国の百貨店などを飛び回り、能登上布の美しさと着心地を伝えている専務の久世英津子さんは、3代目の祖父の背中を見て育った。「夜遅くまで絣(かすり)の図案を考え制作しており、声を掛けられないほどの集中の仕方に、子供ながらに〝すごい仕事をしている〟と思いました」と語る。「図案」とは能登上布の特徴でもある絣のデザインのことだ。絣というと、糸を縛って防染し染めた糸を織るものが一般的だが、能登上布は櫛形の染付道具を使い染料を糸に直接刷り込む「櫛押捺染(なっせん)」や、凹凸の溝が彫られたロールを使う「ロール捺染」などの技法で糸を染めて織る、独特の技法の絣だ。いずれも細やかで集中力を必要とする技術だが、これにより、他の絣とは一線を画す清楚な絣模様が織り込まれていく。

「能登上布YAMAZAKI NOTOJOFU」のディレクターでもある久世さんは、現在のブランドロゴを考える時に、能登上布の絣と着物文化を守りたいという思いから、手染め捺染で描かれる〝絣〟と〝着物の衿〟をイメージしたデザインを取り入れた。今回は導入編の小物のみの紹介だが、ぜひ、機会があれば、能登上布の着物の涼やかさを感じてもらいたい。

■酒セット

■巾着ポシェット
本体 長さ約26.5cm × 幅約17.5cm ¥9,900
職人の手織り生地を贅沢に使ったポシェット。紐の部分もラミー(余剰糸の撚り紐)。紐全長116㎝と長いので、ショルダーバッグとして使えます。
*全て職人による手織り生地を使用しています。

■汁椀

■ストール 雨絣 XL(薄瑠璃)
長さ約220cm × 幅約43cm ¥25,850
雨が降る風景を映した着物柄「雨絣」の縞模様のストール。自宅で手洗い(押し洗い)できるので、夏、汗を掻く時期大活躍。

■4.4寸羽反椀

■数寄屋袋 滝縞(灰)
長さ約14.5cm × 幅約20.5cm ¥11,990
着物地の凛とした縞模様と光沢感により品を感じる縞模様。モダンな柄なので、洋装にも合います。

■皿

■お守り小袋
長さ約11cm × 幅約5cm ¥2,255
着物地は透け感やつや感が魅力ですが、こちらは丈夫さに重きを置いた帯地を使用。リップやUSB入れとして使えます。

■小皿セット

■タッセルイヤリング 絣房(白)
長さ約4.5cm × 幅約1.5cm ¥9,900
「手染め捺染」の織る前の糸の状態の絣模様を生かしたイヤリング。糸の張り感に合わせてシルバーのパーツを使っています。

■箸

■イヤリング コハナ1連(白緑)
花の部分 長さ約2cm × 幅約2cm ¥3,080
その透けるような薄さから「蝉の羽」と謳われる能登上布は軽いので、イヤリングにしても耳に負担がかかりません。布をつまみ合わせた可憐なかたちです。

■小皿セット

■コサージュ(梅)
長さ約4cm × 幅約3~4cm ¥4,290
梅の花は加賀藩の家紋。1815年前後に加賀藩から助成を受けて、近江から職工を招いたことで、能登上布の染織技術は上がったと言います。この話を想起させるモティーフです。

お問い合わせ
山崎麻織物工房
〒925-0071 石川県羽咋市下曽祢町ヲ84番地
TEL:0767-26-0240
https://notojofu.com
※価格はすべて税込価格です。商品の仕様および価格は、変更が生じる場合があります。