伝統工芸のひきだし - Japan Traditional Crafts

東京手描友禅

日野 明子(ひの あきこ)氏
日野 明子(ひの あきこ)
クラフトバイヤー

1967年神奈川生まれ。共立女子大学家政学部生活美術学科在学中に教授であった秋岡芳夫氏の影響を受ける。
松屋商事(株)(百貨店松屋子会社・1998年に解散)にて北欧テーブルウェアおよび国内クラフト/工芸品の営業を経て、1999年独立、スタジオ木瓜を設立。一人で問屋業を始める。ショップと作家・産地をつなぐ問屋業を中心に、テーブルウェアを主体とした生活に関わる日本の手仕事・地場産業の展示会や企画協力、アドバイスを行う。
写真:長田朋子

生きるために欠かせないものを「衣食住」にまとめることがあるが、人間以外の動物は、衣類を纏(まと)うこともなく、ましてや身を飾ることはない。世界のどの国でも装身具や民族衣装は、美術工芸の歴史の側面も持つ。明治維新を境に、日常着であった着物は、特別な日や人が着る物になってしまったが、着物の文化の歴史は日本の工芸技術の歴史でもある。数多くの染織技術の中でも、友禅は工芸でありながら"絵画"との関わりが強い。宮崎友禅斎という絵師の名前を冠したこの技術を継承する人は皆、工芸技術を持った"絵師"の一面を持つ。

友禅染めは、まず図案を考え、下絵を書いた布地に、色が混ざらないように糊を置いた(糸目糊置き)のち、生地を温めながら"色挿し"と呼ばれる染色工程は、他の染色と比較しやすい見どころだ。纏った布は、人が動けば柄が動き、平面とは違った表情を見せる。描く人も着る人もこれが友禅に惹かれる理由の一つだろう。扇絵の絵師の友禅斎も、布に描かれた自らの絵が生き生きと変化していく動きに驚いたのではなかろうか。

京友禅・加賀友禅・東京手描友禅が日本三大友禅、と一般的に言われている。京都に端を発しているが、京都、加賀の煌(きら)びやかな友禅は、江戸では渋く粋で、自由な発想のデザインに変化していく。産業規模の大きな京友禅は工程ごとに分業だが、東京手描友禅は一人で全て完成させることが多い、と職人の働き方も違う。

東京手描友禅の職人、町田久美子さんも友禅の魅力に取り憑かれた一人だ。元々、絵を描くことが好きだった町田さんは、中学校の時に、加賀友禅の実演を見て、自分の進むべき道を見つけた。だが、友禅の本領を発揮する着物産業は衰退の一途。技術を身につける機会を得ることすら難しかったそうだ。さらに独立後、展示会などで「可愛いけど、買えない」とたびたび発せられたお客様の言葉に諦めずに辿り着いたのは、仲間を集めての活動とネットサイトの運営。対面では敷居の高い着物も、ネット上ではじっくり迷える。一人では作るのに限度はあるが、十人集まれば、アイテムも柄も多様になる。次なる手はデジタルとの融合だった。手描きのものをスキャンし、生地にプリントを依頼。新潟の布物工場から上がってきた表情は、町田さんも納得のいく再現性だった。「この技術のおかげで、内装の壁紙にも使えるし、海外からの発注の数や金額にも応えられる」と胸を張る。

頑(かたく)なな生き方で衰退するより、柔軟さで間口を広げたい、という考えこそ、江戸っ子の粋なのかもしれない。

■二つ折り財布

■二つ折り財布
(上)リス〈グレーグリーン〉縦9.0cm×横10.0cm×厚さ2.0cm ¥22,000 / (下)アオアシカツオドリ〈深支子色〉縦9.0cm×横10.0cm×厚さ2.0cm ¥22,000
剱持愛子作
内側は本革使用。カード入れは3つ、小銭入れスナップが付いている。「いつかは着物」の方はまず小物から。

■帯留

■帯留
(左上)かぶりつきネコ 縦2.2cm×横4.0cm×厚さ1.2cm(金具部分含む) 帯締めを通す部分 内径1.3cm×0.5cm ¥6,600 / (右下)ケダマ〈緑〉 縦2.5cm×横2.5cm×厚さ1.0cm(金具部分含む) 帯締めを通す部分 内径1.3cm×0.5cm ¥4,950
剱持愛子作
剱持さんは、細かい作業がお好きで、小物を積極的に製作されています。包み込む仕上げももちろんご本人。

■印鑑ケース

■印鑑ケース(裏地:合成皮革)
(左上)河童と胡瓜 縦3.5cm×横9.0cm×厚さ2.2cm ¥4,400 / (右下)蛸と唐草Ⅱ 縦3.5cm×横9.0cm×厚さ2.2cm ¥4,400
剱持愛子作
印鑑ケース用に、配置を決め、ひとつひとつ手描きしている。着物より手間のかかる作業。

■デジタル友禅®帯あげストール

■デジタル友禅®帯あげストール(ウール)
(左)大ヤタガラス×モザイク(大野深雪デザイン) 巾34cm×長さ170cm ¥11,000 / (右)更紗×水玉(町田久美子デザイン) 巾34cm×長さ170cm ¥11,000
手描友禅を原画にして、プリント工場と提携することで、普段は使わないウールにも友禅の柄を再現できた。

■がま口

■がま口(裏地:合成皮革)
(左)告白うさぎ(町田久美子作) 縦8.0cm×横8.5cm×厚さ3.5cm ¥4,400 / (右)白狐(剱持愛子作) 縦8.0cm×横8.5cm×厚さ3.5cm ¥4,400
絹に楽しい絵柄を手描友禅で施したがま口。裏表、絵柄が違う。薬、アクセサリー、鍵入れとしても重宝する。

■小銭入れ

■小銭入れ(裏地:合成皮革)
(左上)猫と鯛 縦6.0cm×横10.5cm×厚さ1.0cm ¥3,960 /(右上)シャム猫 縦6.0cm×横10.5cm×厚さ1.0cm ¥3,960 / (下)文鳥たち 縦6.0cm×横10.5cm×厚さ1.0cm ¥3,960
剱持愛子作
上質な絹の着物生地に描かれた図柄は、反射が一味違う。同じ絵柄でも、手描きなのでひとつひとつ微妙に違う。

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