心疾患、腎疾患、そして肥満や糖尿病などの代謝疾患は、それぞれ単独でも重大な健康問題ですが、近年はこれらが相互に影響し合う「心腎代謝連関症候群」という概念が注目されています。心臓と腎臓は血液循環と体液・電解質調整を担う生命維持の要ですが、肥満や糖代謝異常、脂質異常といった代謝障害により、動脈硬化を進行させて、心疾患、腎疾患を引き起こし、三者はさらに悪循環を形成し、心臓の機能の悪化が血糖コントロールを不良にしたり、腎臓機能低下が高脂血症を悪くしたりします。脂質異常症、糖尿病は動脈硬化をさらに進行させて、心臓の重要な血管である冠動脈が狭くなることで狭心症や心筋梗塞を発症し、やがて重篤な心不全へと進行します。

心不全では全身へ十分な血液を送り出せなくなり、息切れ、浮腫、体重増加、易疲労感などが現れます。心機能が低下すると腎血流も減少し、腎機能をさらに悪化させます。腎臓は老廃物の排泄だけでなく、体液量や血圧の調整、造血ホルモン分泌など多彩な役割を担っています。腎機能が落ちるとナトリウムと水分が体内に貯留し、血圧がさらに上昇、心臓への負荷が増します。また、貧血や電解質異常が心機能を悪化させ、心不全を助長します。
代謝疾患は内臓脂肪型肥満が原因となって、インスリン抵抗性となり、血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなります。その結果、動脈硬化がもっと進み、心血管疾患および腎障害のリスクが著明に増加します。代謝異常は、心臓と腎臓の双方を同時に傷害する出発点であり、この連鎖を早期に断ち切るセルフケアが、予防の鍵となります。

セルフケアの基本は、危険因子をしっかりコントロールすることです。血圧は減塩、ウォーキング、水泳、適切な体重管理、節酒などにより正常範囲に保ち、血糖は定期的にHbA1cという血液検査の項目をチェックしたり、最近は血糖値を随時モニタリングできるデバイスなどでコントロールを行い、脂質は悪玉コレステロール、中性脂肪の値を管理します。薬物療法が必要になった場合、近年は心腎の両方に保護作用を持つ糖尿病治療薬も登場しており、単なる血糖管理にとどまらない包括的治療が可能となっています。複数の臓器の管理に視点が及ぶかかりつけ医を持つことが重要です。入院が必要になるような場合には単に治療するだけではなく、栄養管理にも行き届いている病院がよいです。

心・腎・代謝症候群は自覚症状がないまま進行することが多い疾患であるがゆえに怖い病気です。しかし適切かつ継続的なセルフケアにより、予防は十分可能です。重要なのは「一つの臓器だけを見るのではなく、全体を管理する」視点です。日々の小さな積み重ねが、将来の心筋梗塞、脳卒中、透析導入を防ぐ大きな力になり、健康寿命延伸に繋がっていきます。

