はあとふる対談

「一つ一つ積み重ね、理想の自分に」ゲスト:高橋 光臣さん(俳優)

聞き手:堀 厚(救心製薬株式会社 代表取締役社長)東京大学大学院、北里大学大学院卒、医学博士。
趣味はバイオリン、ゴルフ、旅行など

高橋 光臣(たかはし みつおみ)さん
高橋 光臣(たかはし みつおみ)さん
俳優

1982年生まれ、大阪府出身。「WATER BOYS 2005夏」(フジテレビ系)で俳優デビュー。その後、「轟轟戦隊ボウケンジャー」(ボウケンレッド/明石暁・役)、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(松岡敏夫・役)、NHK-BS時代劇「神谷玄次郎捕物控」(神谷玄次郎・役)、TBS「下町ロケット」(中里淳・役)、蜷川幸雄演出の舞台「ヴェローナの二紳士」(ヴァレンタイン・役)、TBS「リコカツ」(青山貴也・役)、などドラマ、映画、舞台など幅広く活躍中

コロナ禍の芸能界
本日は俳優の高橋光臣さんにお話を伺います。不穏な世相が続きますが、芸能界にはどのような影響が?
高橋
私はテレビが主戦場ですが、撮影現場ではベテラン俳優さんが率先してカットがかかる度に換気の声掛けをするなど、感染対策を徹底しています。マスク着用は常識で感染防止意識はより一層高く、誰かが感染してしまうことで現場が止まってしまう緊張感が常にあります。全員、事前検査で陰性を確認した上で現場入りしていますが、リハーサル時はマスク着用なので、声量の調節や共演者の表情が読めない難しさがあります。逆に本番時の新鮮さを感じることもあり、そこはポジティブに捉えています。実感としては舞台の方が苦戦している印象です。本数の減少、観客数の制限や、飛沫が飛ぶような芝居を避けたり、感染者が1人でも出れば中止など、舞台関係者には難しい状況が続いています。
やはり観客数は役者のモチベーションに影響しますか?
高橋
過去にお客様が少ない舞台を経験したこともありますが、役者は毎回「今日来てくださった皆様のために全力で」という気持で舞台に立っています。感染拡大初期に舞台に立ち、等間隔に×印のついた客席を見てぞっとした記憶がありますが、それでも感染対策をし、コロナ禍にあえて来てくださった方々のため、全力で演じようという気持ちはむしろ強まりました。笑ったり泣いたり、隣の人と感想を話し合うという生の反応が舞台の醍醐味にもかかわらず、それらが全て制約される現状には寂しさを感じます。
今、役者に問われるもの
以前の対談時、「一流になれ」という恩師の言葉を志とし俳優業に励むとのお話でしたが、多くの経験を積まれた今、ご自身の評価は?
高橋
評価は他人がするものなのでわかりませんが、その言葉は常に頭の片隅にフワフワと浮いていて、「一流とは何か」を考える日々は今も続いています。最近、「斬心塾」という武術道場に通っていますが、同じ型でも100回練習した人と1万回練習した人では、見るだけで違いが分かると先生は仰います。自分でも1万回やったらどうなるのかと思い、3か月かけてやった結果、明らかな違いを感じました。その時、死ぬまで努力し続けられる人こそが一流と認められるのではないか、というぼんやりとした手応えを得て、一つのことを何度も繰り返す日々を送っています。
武術の反復練習が自分の糧になることは理解できますが、“演技”の糧になるものは?
高橋
同じ役を別の役者が同じアプローチでやっても、全く違うものになるのは、その人の生き様、考え方が表れるからでしょう。台本の読み方もありますが、練習というより、毎日の過ごし方、人生観の方が大事だと最近特に思います。
私生活を含め、今の時代に必要な俳優の資質とは?
高橋
かつては“芸の肥やし”と言われ私生活に寛容な時代もありましたが、品行方正な人間にしか役者を始め人前に立つ仕事はできない昨今では、昔のような破天荒なスターはもう出てこないでしょうね。芸能人の事件が起こる度に「罪を犯したことがなくても犯罪者の役を演じるように、役者は個人的経験がなければ演じられないという訳ではない」と言われます。個性が打ち出しにくい時代に頭ひとつ抜け出すには、新たなアプローチの仕方や、これまでとは違うやり方を模索する必要性を感じます。いずれにせよ想像力の欠如は役者の幅を狭める点からも、役者にとって一番の武器はシンプルに想像力だと思います。
想像力を高める方法はあるのですか?
高橋
色々な作品を見て、参考になる部分を自分の引き出しに入れておくなど、体験を記憶することが基本ですね。私は泣く芝居が苦手で、実生活でも自分の泣くスイッチがどこにあるのか分からなかったのですが、父の葬儀で、遺骨を父方の祖母に手渡す時に涙が止まらなくなった経験があります。その時「ああ、俺はこういう時に泣くのか」と気づきました。役者とはそうして人生をかけ、多くのピースを集めていく職業なのだと思います。
自分の感情すら客観視する、まさに24時間役者なのですね。
高橋
才能の塊みたいな人が集まった業界でありますが、「上手い役者が残るわけじゃない」と昔から言われたり、上手いが鼻につき、芝居に表れることが敬遠されるのは、そこに演技だけではない、踏み外してはいけない何かがあるのだと考えます。職業に関わらずまずは、人に愛される人間であること、常にそういう自分でありたいです。
ネット社会での立ち位置
SNSなど俳優やタレント自身が発信者になれる昨今、YouTube番組、ネット配信ドラマ・映画などとの関わりをどう捉えていますか?
高橋
瞬時に世界に発信できるSNSは便利なツールで、私もインスタグラムをやっていますが、安易な発信は危険な側面もあるのは事実です。人間誰しも自分では気づかない変な部分があると思っているので、どんな記事でも事務所の確認を得るよう注意しています。スマホ全盛でテレビの存在意義が問われていますが、逆に媒体が増え、可能性が拡がった感はあります。“ながら視聴”も多いテレビでは、その人たちを引き付ける大きな芝居、大げさな芝居が必要ですが、映画やネット配信の場合は能動的な視聴なので、瞬きだけなど細かい動きでも意図が伝わりやすく、演技のギアを変える必要性を感じています。
エゴサーチはしますか?
高橋
しますよ、ドラマ放映中もリアルタイムで。世間は私をどんな風に思っているのか気になるので確認しますが、たまにすごくショックなことを書かれたりしても、そこはスルーします。今のところ、SNSの顔の見えない意見で自分の考えを大きく変えたりとかはないです。
一人の意見を重要視する事も大切ですが、必要以上に気にしないなど、バランス感覚が重要な時代と言えるでしょうね。
ヒーローは子供が苦手だった?
お子さんが生まれて、仕事や心境に変化はありますか?
高橋
ガラッと変わりましたね。元々子供はそれ程得意ではなかったのですが、自分の子供が生まれたことで、他人様の子供も愛おしく思えるようになりました。励みになるのはもちろん、以前はドラマや映画の親子のくだりに心動かされなかったのですが、全く逆になりました。人生80年とすると、自分の人生プラス80年の時間を与えてもらった気になるのと、自分が生まれてきた意味、彼らに何を伝えられるか、そのために今何を学ぶべきかを考え、学びたい欲求が増えました。
戦隊ヒーローを演じていた時は、子供に対して今とは違う心境だったのですね?
高橋
正直、あの時は近寄ってくる子供たちに戸惑う部分もありました。ボウケンレッドが倒れた時、子供たちの「がんばれ〜!!」という心から純粋な声援がすごく耳に残っていて、改めてヒーローってすごい存在だったのだなと思うと、当時を少し後悔しています。親になった今同じヒーローを演じたら、子供に媚びすぎてそれはそれで良くないかもしれませんけど(笑)。
お子さんが俳優になりたいといったら賛成しますか?
高橋
やりたいという可能性はゼロではないのですが、私自身、この業界で生き残るのはこんなに大変なのかという思いもあるので複雑です。野球選手は野球をしていなければ話になりませんが、役者の場合、何をやっていても勉強になるので、色々なことを伝え、ある程度のものは身につけさせて、本人がやりたいと言った時の選択肢を増やしておいてあげたいです。
体が資本
2016年から救心錠剤のCMにご出演いただいていますが、周りの反響やご感想は?
高橋
一番有難いのは、常にテレビCMや電車のステッカー等に露出していることで、役者仲間からも「見たよ」と度々連絡をもらいます。昔からある商品、企業と仕事ができるのは誇りですし、一つ一つ積み重ねて歴史を築いてきた会社と役者の道は相通じるものを感じ、私の中の一つの理想形とも言えます。
健康管理はされていますか?
高橋
役作りを兼ね武術の稽古と筋トレで、脂肪をそぎ落としたバキバキな身体を目指し、1日の糖質摂取量を50g以下にし、脂とタンパク質を摂るケトジェニックダイエットを実践しています。このダイエット法には週に1度ストレスを溜めない目的で、何でも食べて良いチートデーがあるのですが、次のチートデーに何を食べようかばかり考えています(笑)。家族が増え、自分の体と向き合うことも多くなり、添加物や塩分にも注意しています。
新しいドラマにご出演予定とのことですが?
高橋
「ノーサイドゲーム」に続き、1月からのTBS日曜劇場「DCU」に出演させていただきます。海上保安庁に新設された、水中事件や事故の捜査を行うスペシャリスト集団DCU(潜水特殊捜査隊)の副隊長・西野斗真です。今回の作品は海外プロダクションと共同制作という大きなプロジェクトなので、40歳の節目にこのような作品に携われることを幸せに感じ、自分の可能性を信じて全力で取り組んでいきます。
ドラマ楽しみですね。今後も更なる飛躍を期待しております。本日はありがとうございました。
2022 vol.40