岩崎元郎の山歩きのススメ

山仲間を作ろう

岩崎 元郎氏
岩崎 元郎(いわさき もとお)
日本登山インストラクターズ協会理事長

1945年、東京生まれ。無名山塾顧問、日本登山インストラクターズ協会理事長。中高年登山ブームの仕掛け人。81年春、ネパールヒマラヤ・ニルギリ南峰登山隊に隊長として参加。帰国後11月、無名山塾を設立。NHK教育テレビ番組『中高年のための登山学』で講師を務める。著書に『山登りの作法』(ソフトバンククリエイティブ)、『ぼくの新日本百名山』(朝日新聞出版)、『登山不適格者』(NHK出版)ほか。

老若男女を問わず、山を趣味とする方が増えているように思える。しかも、パーティではなく一人で山を歩いている方が多い。一人歩きのリスクは、だれもが知っていることなのに、である。

札幌在住の山の知り合いに車を出してもらい、北海道の山を登ったときのこと。登山口に八時ころ到着、ザックを背にして歩きはじめようとしたとき、登山者が一人、下山してきた。若い女性で、山頂まで往復してきたという。登山開始時は、まだうす暗かったにちがいない。ヒグマが棲息する北海道の山である。話を聞いているだけで、鳥肌がたった。

一人歩きの人にその理由を聞くと、「山仲間がいない」という返答が圧倒的に多い。次いで多いのが、「日程が合わない」である。しかし、よくきいてみると、「山仲間がいない」のではなく、仲間をつくるのは面倒だ、一人の方が気楽でいい、というのが実情のようだ。

そんな次第で一人で山に入る。ポピュラーなコースでもそこは山、時として前後に登山者の影がみえないときもある。ちょっと緊張、けつまずいて転倒、足首捻挫なんていう目にあったりする。同行者がいればあれこれ面倒をみてくれるのだろうが、一人きりでは出るのはため息だけ。山仲間の必要性を痛感する場面となる。

さて、どうやって山仲間を作るのか。ぼくは、山の中で出会った人に片端から声掛けするのが、手っ取り早いと思う。山小屋泊のときなど、夕食時にとなりに座ったひとに話しかけたらいい。同じ山好き、一声かければ話ははずむこと疑いなし。つぎの山行が議題に上がれば、仲間獲得まであと一歩だ。

楽しく安心安全な山歩きを続けるためには、なによりもまず、山仲間を作ることだ。