人にとって最良の運動は「歩く」こと。言うは易しだが、習慣として歩き続けるのは難しい。運動が単純すぎて、すぐ飽きがきてしまうからだ。歩くことを継続できるように、街道歩きやロングトレイルが提案された。が、イマイチの感はぬぐえない。で、僕自身の経験からも、比較的に継続しそうな「歩く」として、熊野古道歩きを提案したい。歴史が背景にあることが、飽きさせない理由になっている。
本宮大社、速玉大社、那智大社、この三つが熊野三山であり、この三山をめざす道が熊野古道。コース名としては、紀伊路、中辺路、大辺路、大雲取越・小雲取越、小辺路、伊勢路、奥駈道(おくがけみち)が挙げられる。
後に「蟻の熊野詣で」とよばれるくらいに大流行した熊野詣では、平安中頃からはじまった。熊野の「くま」は、「隅(すみ)」とか「端(はし)」を意味する。京の都から眺めれば紀伊半島の先っぽは、日本の端っこであっただろう。「くま」には「神」という意味もあり、紀伊半島の先っぽは熊野となり、「神様のこもるところ」となった。
京から淀川を下って八軒家で大阪に上陸、九十九王子を数えながら海岸線を熊野へと辿るのが紀伊路、田辺市にはいると道分け石で街道は二分。左が中辺路、右が大辺路。本宮大社にむかう中辺路は人気も高い。本宮大社、速玉大社、那智大社と三山を巡り、青岸渡寺と那智の滝に参拝を済ませてから、本宮大社へ戻る山道が大雲取越・小雲取越である。
高野山から果無峠を越え、本宮大社を結ぶのが小辺路、伊勢神宮から本宮大社をめざすのが伊勢路。きわめつけが大峰山脈全山縦走となる奥駈け。と、追いかけていけば、飽くことのない「歩き」が楽しめる。